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デジタル活用による儲かる経営づくり最終回(全4回)

コロナ禍を契機として、中小企業においても事業継続・生産性向上等の観点から、バックオフィス業務のデジタル化の機運が高まっています。また、令和3年度税制改正において、税務署の事前承認の廃止やスキャナ保存の定期検査要件の廃止(スキャン後すぐの原本破棄を認める)など、電子帳簿保存法の大幅な要件緩和が行われました。これにより小規模事業者であっても、安価なクラウド会計ソフトを活用して電子帳簿が利用できる環境が整いつつあります。

会員事業者の皆様が電子帳簿保存法やクラウド会計ソフト等の活用によるバックオフィス業務のデジタル化について理解を深められるよう、専門家による全4回の解説記事を4か月に渡って連載いたします。

今回は最終回です。

◆バックナンバーはこちら☟
【第1回】働き手が2,000万人減る準備はできているか?
【第2回】小売店が毎日タブレットをのぞき込むワケ
【第3回】2022年、ペーパーレス経理に今度こそチャレンジ

「今日できることから」でDXは成功する

本連載ではここまで、中小企業の業務の電子化やクラウド化、デジタルトランスフォーメーション(DX)などに言及してきた。しかし、どれだけ良い内容を知ったとしても実行しなければ絵に描いた餅に過ぎない。では、具体的に何から着手すれば良いだろうか。

これは異国語の学習に似ている。基本の文法やローマ字を覚え、そこからいち早く話せるようになるには、子ども同士のお喋りのような簡単な会話から練習すれば良いだろう。これはDXにも共通することで、私は常に「目の前の低いハードルから順に飛び越えよ」と伝えている。

経理業務ではどうやってDXを進めるべきだろうか。「仕訳をAIで自動化したい」「予算実績管理を自動化したい」など、大々的に改善したくなるのが人間の性だろう。しかし、テンキーを駆使したアナログな経理の歴史が長ければ長いほど、新しいシステムへの移行作業に抵抗する人間も増える。

では、経理における「低いハードル」とは何だろうか。ここからは発想の勝負で、観察力が物を言う。

経理の仕事は多岐にわたる。例えば、「お金を銀行から振り込む」という作業は、経理担当者が請求書を紙で受け取る→支払一覧カレンダーを作る→銀行から1件ずつ振り込む→会計ソフトへ仕訳を入力する、と、これだけ工程がある。ミスが許されないためそれなりに負担となるだろう。

しかし、この債務管理、支払管理の領域だけでも様々なクラウドツールが存在する。代表的なもので、「invox」「LayerX invoice」「Sweeep」などがある。債務を一元管理するだけでなく、スキャンによる文字解析など入力補助機能も搭載されている。会計ソフトをいきなり替えることより、アナログな工程を一つずつデジタルに置き換える方が余程簡単なはずだ。

「支払い程度の効率化だけでは、抜本的に生産性が上がらないのでは」という意見もあるだろう。経理全体のデジタル化を“一気に”、“ガラッと”進めたくなる気持ちも分かる。しかし、基幹部分にいきなりメスを入れる心の準備が、経理部長・担当者含めて整っているだろうか。まずは経理担当者に「私にもDXができた」「DXって大事だね」「生産性が上がると幸せだな」という当たり前の感覚を経験させなければ、本丸の改革に着手する土壌は整わないと考えた方が良い。

今日からできることをおさらいしよう。まずは、課題を整理し、解決のアクションプランを書き出すこと。ここでは数を出せるかが勝負だ。課題を出し切ったら、解決のハードルが低い順から並べる。たとえ些細な改革に見えても、最初は簡単なことからなすべきである。

経理の本質は事務作業ではなく、経営者に会社の状況をリアルタイムに報告し、経営者に意思決定やアクセルを踏むタイミングを示唆することにある。経理の効率化によって単純作業から解放され、「事務部門」から「数字を使った経営者のアシスト部門」へと生まれ変わることができるはずだ。

DXは一日にしてならず。DXは経営者一人の力では成されず。あなたの未来は、目の前の、ほんの砂粒ほどの些細な改善が鍵を握る。

(つづく株式会社社長 井領 明広)

 

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【第1回】働き手が2,000万人減る準備はできているか?
【第2回】小売店が毎日タブレットをのぞき込むワケ
【第3回】2022年、ペーパーレス経理に今度こそチャレンジ